【チャレンジタイムス】貢献しあえる人を育てる組織づくり

皆さま、こんにちは。
本日は「チャレンジタイムス」第6回目をお届けします。ぜひお付き合いくださいませ。

 

第6回目は、石黒健太税理士事務所の石黒健太先生です。

石黒健太税理士事務所
税務業務に加えて、資金調達からクラウド会計業務まで創業支援にも力を入れている税理士事務所です。また、エンゲージメントを高める組織づくりや、自己目標管理などで社員を育てるとともに働きやすい環境づくり・組織づくりにも注力。自社がモデルケースとなり、新しい価値の創造にチャレンジし続けています。
▼HPはこちら
https://ishiguro-tax.jp/

マンションの一室から税理士事務所をスタートし、「開業5年で売上1億円」という大きなチャレンジを達成された石黒健太先生。「組織で仕事をすることが、最終的に個人にやさしい」というお考えのもと、自分で考えることのできる人材育成と働きやすく成長できる組織づくりに注力されています。今回は、石黒先生のこれまでのチャレンジと今後のチャレンジ、そして先生が考える「人」と「組織」についてお話いただきました。

創業支援や会計の自動化サービスにも注力

ーー石黒健太税理士事務所として提供しているサービス、そして石黒先生の役割について教えてください。
税理士事務所なので税理士としての顧問業務と決算報告書の作成が基幹業務になっています。特徴としては、創業支援に力を入れてきたので、創業期の会計の立ち上げや資金調達の支援が強いですね。それ以外では金融機関からの融資や助成金の活用などを行い、そういったところをメインに伸ばしてきてます。
最近では「Money Forward(マネーフォワード)」の活用による会計の自動化のようなサービスにも力を入れています。預金やクレジットカードとの連携もそうですが、経費精算のシステムや販売管理システムの連携などをトータルで提案させてもらって、起業したあとにスムーズに会計が回るようにサポートするというところに力を入れています。

ーーそんな中で石黒先生のお役割はどんな部分でしょうか。
僕はずっとプレーヤーとしてやってきたんですが、今はそれぞれのサービスをどのように作っていくのかを考えることや、メンバーの教育が中心的な役割になっています。
元々は税理士や融資のプレーヤーとしてやってきましたけど、今はDX推進部と財務支援部、社労務部というのを立ち上げて、ここの経営幹部の人たちにだいたいのことは任せています。僕は組織全体の方向性を考えたり、各部門ごとのサービスの質をもっと上げるために「こういうことをしていこう!」という方向づけを行っています。
あとはトップ営業ですね。入口はやっぱりまだ僕が多いので。契約を取りに行くのは僕の役目ですね。集客のためのセミナー講師なども行っています。

自社をモデル事務所に!
「開業後5年で売上1億円規模の事務所をつくる」というチャレンジ

ーーこれまでの過去のチャレンジはどんなものがありますか?
大きいところでいうと…開業して5年で1億円の売上規模の事務所をつくるというのがチャレンジでした。“何が”と言われると難しいんですけれども、全体ですね。
組織づくりから集客から採用、教育など…1億という規模を達成するためにできることは全部やろうということで、去年までの5年間でいろいろやってきました。

ーー節目を迎えられましたね。
そうですね。最終的には5年で1億2000万円までいきました。
この売上を追ってきた理由としては、先ほども話した通り創業支援に力を入れて事業を展開してきたなかで“5年で1億くらいの規模の組織を目指しているお客さま”をターゲット層に設定しようと思ったからです。
やっぱりお客さまに求めるからには、自社もそのくらいのスピード感を持ってチャレンジすることが、最終的にお客さまへ返せるサービスになるのかなと思います。自分のところも5年で1億目指す、お客さまもその辺を目指すところをターゲットにしていくし、そのお客さまが持つ課題について提供できるサービスをつくっていこうと考えこのチャレンジを始めました。
今では、そういった顧問先に対して立ち上げ時期の資金調達や会計の導入を行い、会計がちゃんとできるようになったら財務の顧問契約をして、「もっと経営を良くしていくためにはどうしたらいいのか?」「プラスαの仕事をしていくためには、どうしていくのが良いのか?」などの財務的な支援をしています。その後の成長を達成するには、組織づくりの支援が必要なので、担当部署を立ち上げてそういった支援メニューを増やしてきています。
“自社としての1億円”にチャレンジすることで、それぞれのフェーズでどんな課題があるのかを自社で経験できたことが、このチャレンジをとおして一番良かったことです。
なので、弊社としては何かの大きなサービスを掲げているというよりは、自社をモデル事務所として5年間で1億円を達成するためには何が必要なのかを追ってきたことが、1番のチャレンジであり、その経験を通して考えてきたのが今のサービスメニューなのかなと思います。

1億円を目指すなかでたどり着いたのは“未経験者をいかに育てるか”

ーー大きな目標を達成されてスタッフの方のモチベーションや反応はいかがでしょうか。
今いるスタッフたちは、ほかの事務所の人たちが注目してくれていることを聞いて喜んでいたりとか、1億円達成したことに対して喜んだりはあると思います。でも、開業当初は僕以外のメンバーは信じていなかったんですよね。マンションの一室で3人での開業だったので、そこから、5年後に売上1億円になっているということには疑問だったと思います。やっぱりそこも経験で、初期のころからいる人は1人いますが、人の入れ替わりもあって組織には波があることを経験しているので…。
今は良い事務所ができたと思っています。でもそれは、人の入れ替わりや採用の基準を変えたりをしてきて…最初は即戦力の人が欲しかったのですが、今は未経験の人をいかに育てていくかという体制に変えていっています。
いろいろな問題を越えてこういう考え方にきたという感じですかね。当時からいる人に言わせると「めっちゃ優しくなった」って言われます(笑)。

ーー今はスタッフの方が20名ほどいらっしゃいます。この5年間でずいぶん増えましたね。
そうですね。やっぱりしんどかったですね、増やすタイミングが。純粋に財務がしんどかった(笑)。売上が上がったから増やしたわけではなくて、僕の場合は最初から「売上1億円」のために人を入れていたので。
なので、これまでほとんど残業はないんですよ。ハードワークはハードワークなんですが、時間数が多いのではなくて、常に「新しいことをやる」ということと、組織として違うフェーズに移っていくということでの、質的なハードワークです。

組織で仕事をすることがなにより人にやさしい働き方

ーー環境は変わりつつも、スタッフの方はしっかりとついて来られてきたのですね。
そうですね。なかには上手くいかない人もいるので、採用基準を変えてきました。元々業界経験がある人や事務をしたい人にとっては、実際はいろんなことにチャレンジすることになるので上手くいかないかなと。なので、そこで独立していく人や辞めていく人もいて、その中で貢献しあえる人を中心に採用するようにしてきました。経験者はあまり雇わないですね。経験がある人は、前の事務所の経験をやっぱり持ってこられるので。
ほかの税理士事務所は個人プレーのところも多いので、税理士先生がトップ営業だけで教育はしない、背中を見せて育てるというか…案件をボンと渡して「これをさばいてね」みたいな経営スタイルも多いです。うちはけっこう分業で、チームで仕事をしていこうという形でやっています。個人プレーをされると品質が落ちたり、個人でルールを変えたりなどがあるんでね。うちは「組織をどうつくるのか」ということにチャレンジしています。
「組織で仕事をすることが、最終的に個人にやさしい」という思いがすごくあります。属人化した仕事をすると、ほかの人が何かあったときに対応できなくなるし、その人も時間数を減らしたいと思っても、担当があるから無理という話になってくるので。「働きやすさを追おう」と思うと、標準化であったり組織化するというスタイルが大事かなと思っています。それをつくっていくのが大変でした。

「理念」「組織」「セルフマネジメント」をしっかり教育する

ーー未経験の方が入ってからの教育体制はどんなところを工夫していますか?
ほかと違っていて1番上手くいったなと思ったのが、ドラッカーの勉強や経営全体の勉強を先にやっています。うちの経営理念の共有や、社会人として必要な知識、セルフマネジメントですね。「こういう能力が仕事で成果を上げるために必要ですよ」とか、「組織とはこういうものですよ」といった勉強を先に力を入れてやっています。そこがすごく上手くいって良かったなと思うところで、普通の大きな事務所だと「簿記の勉強してくれ」とか「実務的なことを先に覚えてくれ」とかってなるところが多いと思うんです。でもうちは、もちろんそこも教育しますが、プラスαで「セルフマネジメントでいかに成果を上げていくのか」「そもそもうちの事務所にとっての成果は何なのか」とか「世の中にとって何のためにうちの事務所があるのか」とかの話もしているので、そこでまずは仕事に関する考え方をしっかり持ってもらって研修や仕事に当たってもらうというようにやっています。これはやってみて良かったです。

ーー経営理念の共有や教育は、石黒先生ご自身が毎回なさるのですか?
僕にしかできないと思います。なので僕がやっています。今年3人入ったんですが、全10回くらいで、まず世の中というのは「個人」が一番下にいて、その上に「組織」があって、「世の中」がありますよと。組織が世の中に新しい価値を提供して、そこで初めて成果が上がりますと。でも、ほとんどの人が組織の内部や人間関係、権力とかにこだわってしまっています。本来は「世の中=お客さま」の方を向いて仕事をしなければいけませんよ。という話をします。そうするとその後がスムーズなんです、何のためにこれを今勉強しているのかというのが。地味じゃないですか?会社の仕事って。特に税理士事務所って書類の整理だったり、入力があったり。「その先に、経営のアドバイスがあって、上手くいく会社や改善していく会社があるんだよ。」というのを伝えていく。「そのためには、基礎力として会計の知識とか処理能力というのは磨かなければいけないよ。」というところから入っています。その辺は結構やってて良かったかなと思います。

ドラッカーの勉強会で社員の「成果」「組織」の考え方を養う

ーー石黒先生ご自身が毎回の勉強会を開催するとのこと、なかなかできないことだと思います。ご自身で動こうと思われたきっかけはあったのですか?
やっぱり組織で伸び悩むのはなんですよね。1億円という目標を目指す過程で、いかに社員を育てていくのかが大事だと思っています。今だったらその上の幹部をどう育てていくかが課題になりますよね。
あまりやりたくないという気持ちはなくて、僕がやりたかったんです。元々教えるのが好きなんで。うちがお客さま向けにやっているドラッカーの勉強会があります。元々ほかの社労士さんにお願いして始めたんですが、「やるからには自分も生徒としていきます」と言って、そこで勉強したことは、すぐに社内で勉強会を開いて自分から提供しました。初めは任意参加にしてお昼に「僕がランチ代出すから、受けたい人だけ受けて」という形式でやってたのですが、受けている人と受けていない人の差が出てきました。「成果って何なのか」「組織としてどう動くべきか」と考える人が出てくる一方で、ただ業務・作業をするだけの人がいて…。「これは全員にしたほうが良いな」と思って、そこで任意じゃなくて一律全員でという形に変えました。

ーースタッフの方と密に関わりを持っているからこそ、理念がしっかりと全体に共有できているのですね。
…と、願っております(笑)。

3ヶ月に1回の所長面談で個人を理解し尊重する

ーースタッフの方々とは良い関係が築けているのですね。
そうですね、うちはわりとフランクな社風だし個別でワンオーワンとかもやっています。ドラッカーの勉強会だけで終わりではなく、3ヶ月に1回チームごとに、所長面談1時間というのをやっています。そこはフリーなんですよ。何しゃべってもいいってことで、僕はほぼ聞き役でアドバイスをするくらいです。家のことでもいいし、キャリアのことでもいいし、仕事のことでもいいし…そういうところでいろんな話をしているので。
自分で言うのもなんですが、仲の良い事務所だと思っています。

wevoxで社員のエンゲージメントを測定!

ーースタッフの方にとっても大きな安心になりますし、定着にもつながりますよね。
そうですよね。元々マンションの一室から京都に来たのも人の採用が目的なんでね。いかに良い人を入れるのか…集客はできるんですけど、そこを回す人がいないとせっかく来た人もいなくなってしまいます。
そうすると、お客さまも離れていっちゃうし、いつまでたっても自分が疲れていっちゃう。やっぱり組織と集客は両輪だと思います。集客ができないのも困るんですけどね。組織づくりというのは大事だと思ったので、やり方をいろいろ模索して、その中でドラッカーであったり、エンゲージメントですね。「wevox(ウィーボックス)」ってご存じですか?
wevoxは、エンゲージメントを測定できるアプリを提供しているんです。大阪で5億〜6億くらいの売上がある事務所の所長に聞いて、「やった方が良いよ」と勧められたので京都で社員を増やしたときにやりました。そしたら、入れたとたんに下がっていったんです。測定開始したとたんにどんどん下がっていっちゃって(笑)。これはさっき言った「組織の転換期」だったんです。マンションの一室でやっていたメンバーから、京都に来て採用できるようになってきたときに、既存メンバーのエンゲージメントがだだ下がりしましたね。
言えば、今まで仲良くマンションの一室でやっていて、所長が全部見てくれていたのが、「これからチームをつくって組織化していきますよ」となったら、「私の居場所はどうなるの?」とか「今まで言ってきたことと違う」などの意見がいっぱい出たんです。で、新しいメンバーのエンゲージメントは上がっていく、古いメンバーのエンゲージメントは下がっていくというのを半年くらい経験しました。そこで辞める人もいて…でも自分は1億を目指していたし、マンションの和気あいあいが良いとは思っていなかったので。そこは卒業のタイミングなのかなと。そういう事務所が良いんだったら、そういうところで働いたらいいし、うちの事務所はそうじゃなくて上に行こうと思っているから。そんなこともあり、いろんな施策をして、社員教育の体制や理念のつくり直し、ドラッカーの勉強会をしたりしました。

1億の次は、新しい価値観の組づくりへチャレンジ!

ーー今後の石黒先生がしてみたいチャレンジはありますか?
人材と組織についてばかりしゃべってますが…(笑)。5か年計画で1億を目指していたのですが、次の5年をどうつくっていくのかを考えている最中で、そこでいうとまた「人」みたいになってしまいますが、次は「3億!」などの金額的な目標ではなくて、新しい形での働き方ができるような事務所をつくりたいなと思っています。
フルフレックスなどいろんなことをやっています。実際うちから起業したけどうちの仕事をやっている人がいたり、旦那さんが起業家の人がいたり、いろんな人がいるのでいろんな働き方…たとえば、飲食の仕事をしながらうちの税理士事務所で経営や資金調達を学んで、ちゃんとした経営ができる飲食店をつくって、そこで得た経験をうちのお客さまにいる飲食店の方に返すとかができたら良いなと思っています。
僕自身も自分がモデル事務所として経験したことはお客さまにアドバイスしやすいし、実際響くので、そういうのを増やせたら面白いなって。たとえば、学生からうちで採用してその後ベンチャー企業を立ち上げるとか、ここにいると貢献しあえる良い情報があるから集まる場所みたいな組織にしていきたいな、いろんな人がいたら面白いなって思っています。単純にでかくすることを追うのではなくて、新しい価値観の組織をつくるというのにチャレンジしたいなと考えています。
あとは税理士向けのコンサルを始めようと思っています。税理士の方に人材採用や目標管理、行動管理のことなどについて、「これをすると定着率が良くなっていくよ」とか「自分で考えて動く人になっていくよ」とか…そこをネックに感じている人ってめちゃくちゃ多いんです。
個人的には、自社は自由な感じを目指していて、自社だけではなくてほかの税理士事務所に対しても同じような考え方や価値観の人を増やすというところにチャレンジしたいなと思っています。…というか、すでに何件かもう話をしているんですけどね。

人が集まるからこそできる楽しさがある

ーー石黒先生の中では一貫して「人」の部分が大きいですね。
そうですね。やっぱりそこですね。そこが一番楽しいです。自分ができることを伸ばすのも楽しいし良いんですけど、集まるからには自分ができないことができるようになったりとかをしていくのが面白いんです。今育てている人がいたり、やりがいを感じてくれる人がいるのは、自分ひとりではできない楽しさなのかなって思っています。

ーー今後も石黒先生ご自身が中心となってスタッフの教育には携わっていくのでしょうか。
僕の場合は教育じゃないかもしれない…仕組みづくりですね。直接的な本当のフォローはほかの人たちがしています。
僕はコミュニケーション能力が低いらしいんです。ほかの能力でカバーできているので、あまりみなさんは感じないかもですけど、僕は基本的に人に興味がないタイプらしい…(笑)。いろんな適性検査をやったんですが、全部そういった結果が出てくるんです。それこそ、ドラッカーの強みを分析するストレングスファインダーというのがあるんですが、僕が得意とする分野の中に人間関係的な能力がまったく入っていないんです(笑)。戦術考えたりとか仕組みを考えたりはすごい得意みたいなんですけどね。ほかの適性検査をやっても、たいがいコミュニケーションが低く出ますし…。
会ってすぐに仲良くなれる人とかいるじゃないですか?そういう人めっちゃ羨ましいんですよね。僕は人に対して壁をつくっちゃうし、入り込むのとか苦手なんです。なので、そこは人に任せて、僕は得意な目標管理とか仕組みづくりに注力しています。セミナー講師などをやっているからか「しゃべるの得意そう」「人とすぐ仲良くなれそう」って言われるんですけどね。実は苦手です(笑)

苦手は得意でカバーする

ーーコミュニケーションが苦手だからこそ心がけていることは何かありますか?
そこは仕組みでカバーしています。自分が得意な仕組みとかツールを使ってスムーズにしている感じです。放っておいたら僕はやらないです。だから、毎月ワンオーワンのスケジュールを入れるとか、評価制度をつくって絶対に人と会わないといけない機会をつくるようにしていかないと、けっこう放任になっちゃうんで。
週1のミーティングで、幹部の人と打合せしてキャッチアップする体制をつくることもしています。苦手とわかっているので、避けないようにしている感じです。あと、苦手だから真ん中に人を入れています(笑)。

「貢献」した人はしっかり目に見える形で評価する

ーー評価制度について、去年の12月に組織が必要とする3つの領域での表彰を行ったそうですね。
ドラッカーでいうところの“貢献”ですね。貢献することが大事といわれていて、「貢献には3つの種類がありますよ」という話があって、貢献の1つ目が「直接的な成果」です。売上を上げるとか利益を出すのが直接的な成果に当てはまります。2つ目は「人材育成」です。組織をつくっていくとか、人をつくっていくというところですね。3つ目は「価値への取り組み」で、新しいサービス開発などです。
この3つがないと組織はつぶれていくと言われていて、この3部門について年末に表彰をしています。ドラッカーの勉強をしてから表彰を行うことにしました。昨年表彰した方は、補助金支援などの経営支援で売上を上げた方を「直接的な成果」の部門で表彰社内勉強会の開催やマニュアル作成を行ってくれた方を「人材育成」の部門で表彰領収書をスキャンして自動で会計データをつくるという仕組みを導入して、それを社内で広めた方を「価値への取り組み」の部門で表彰しました。

ーー直接売上に関わらない部分もしっかり見ていてくれて表彰されると、スタッフとしてはすごくモチベーションも上がりますし「認めてもらえているんだ」と思います。
そうですね。うちは未経験採用なので、直接売上を上げられる人ってなかなか難しいんですよね。やっぱそこだけ見ると殺伐としちゃうので、お互いのことを考えると人材育成は大事だし、新しいことにも取り組んでいかないと。と思います。普通の事務所だと、新しいことに取り組むのは面倒くさいと感じるところが多いのかなと思っています。「何で今上手くいっているのに、そんな仕事が増えるようなことを考えるんだ」と考えがちなんですが、うちはそこは絶対必要だと考えています。さっき言ったドラッカーの勉強会や表彰、賞与への還元などもしているので、全員が楽しんでやってくれていると信じています。

目標管理と行動管理でPDCAをしっかりサイクル化する

ーー勤務体系が人によって異なる中で、日々の情報共有はどんな工夫をしていますか?
目標管理と行動管理を行っています。目標管理は、僕が掲げた目標に対して、各部署が何をすべきか目標設定をして、それに基づいた個人ごとの目標を各部署の担当に割り振って全員が何かの責任者になるという形にしています。事務所の成果に全員が貢献できるような体制をつくっています。
行動管理は、うちが思っている「こういう人を増やしたいよね」「こういう項目が大事ですよね」という人や項目をみんなで出し合ってカテゴライズして、これを月に1回ワンオーワンと部署で面談をやっています。単に理念を掲げるだけではなくて、「それを達成するためには目標を何にしなきゃいけないのか」「日々の行動はこういうところに気をつけなくちゃいけない」を振り返る時間を強制的につくっています

ーー振り返る時間を強制的につくることでしっかりとPDCAサイクルが回っていますね。
なかなか難しいですけどね。コーチングの研修などを月に1回開催したり、メンターをつけたりとか…制度があっても運用はやっぱり人なので。そこはやっぱり難しいですね。僕自身もそうです。教える人に「できる!」って言われたら「そうか」って評価が甘くなっちゃうので、そうならないように、コーチングのスキルを使って指導できるように指導者側も勉強しましょうということですね。

前を歩く先輩から問題と解決策を学ぶ

ーー日々いろいろな情報はどんなところから得ていますか?
やっぱり多いのは、同業で(石黒先生が)目指しているところですかね。御社の若杉先生もそうですが、いろいろなビジネスやSNS、直接お会いして話していく中で、「どういうことをやっていかないといけないのか」を、僕より先に行っている方がいっぱいいらっしゃるので。話を聞いて「次にどういう課題が出てくるのか」や「問題をスムーズに解決するためには、何をやっていかなくてはいけないのか」を見つけている感じですね。
上手くいっている人に聞いてしまえという。

社員はプライベートを大事にしながらやりがいを持つ

ーーリモートワークやフルフレックスも積極的に導入し、「京都モデル」ワーク・ライフ・バランス企業として認証されています。
そうですね。でも出勤する人が多いです。みんな事務所が楽しいようで出勤したいらしいです。

ーー職場環境の良さがあってこそですね。
手前味噌ですが(笑)明るい事務所です。就労環境もいいと思います。勤務時間が自由ですしね。フルフレックスで曜日も自由で、在宅も出社も自由なので。

ーープライベートを大事にしてこその仕事ですものね。
そうですね。私自身も仕事とプライベートのバランスが重要だと年々感じるようになってきたので、他のメンバーにもプライベートと仕事の両立をしてもらいたいと思っています。

ーー柔軟でとても働きやすいですね。
ありがとうございます。あとはチャレンジするのが面白いみたいです。何かしらみんな目標を持って仕事をやるので、そこをやりたいというのはあるようです。

人生は限られている…バランスが大事!

ーー石黒先生のSNSを拝見していると、毎週のようにお子さまをどこかに連れて行って楽しそうです。経営者としての姿とパパとしての姿、しっかりメリハリをつけているんだなという印象を受けました。
ありがとうございます。最近の僕のテーマは“バランス”で、それがすごく大事だというのを歳を重ねるごとに思っています。僕自身は超絶ブラックなところで働いていて、20代前半は年間200時間の残業をしたことありますし、マックス100日連勤とかもありました。年が明けてから外資系の仕事が入って、3月終わりから4月初めまではずっと忙しい。終電すぎてタクシーで帰るのが普通みたいな。
そのあとの会社は役員になったので、労働法も適応されなくて、月の休みが2日とかでした(笑)でも、実務を経験する上では良かったんです。短期間でいろんなことを吸収できたし、お給料も周りと比べたら良かったので。でもね、人生は限られているんで、メリハリをどんどんつけていくようになったという感じです。
ーー20代のご経験があってこその今があると。
そうですね。なのでかわいそうと思うこともあります。「ガンガンやりたい!」って言われても、今の世の中じゃ企業側もリスクですし。自分が3年で身につけられたことが、今若くして税理士になった人だと5年はかかるんだろうなと。質が変わっているとはいえ、量をこなさなくてはいけないこともあります。やっぱり能力高めて何かしたいなら、時間もかけなきゃいけない。
今僕は1日12〜13時間くらい働いているんです。週6仕事なのでたぶん普通の人の倍くらいは働いています。80時間くらい働いてるのかな?週1は絶対に休むって決めています

ーー勤務時間が長い中で「週1はオフだ!」と決めているのですね。
12時間も作業的なことだけではなくて、新しいことを考えたり自分の勉強をしたりというのも含むので、めちゃくちゃ楽です。8時間の労働をしている人からは「しんどい」って思われるかもしれないですけど、僕の場合はけっこうボーダレスなので。
お客さまに会うときは別ですよ。いろいろ疲れるときも、もちろんあります(笑)でも、多くの時間は新しい事業を考えたり、資料をつくったりする時間なので、そこは楽しんでやっています。精神的なつらさはないですね。

ーー基本楽しんでいるのですね。「しんどいな」「つらいな」という思いはないのですね。
基本楽しいです。しんどさとかつらさもないですね。月曜日っていうのを忘れます。土曜日はさすがに人がいないのでわかるんですけど。金曜日だからテンション高いとかもないですね。

ーーそれってすごく幸せなことですね。
それは僕も最近思いました。「何か面白くないな」「何か面白いことないかな」というのが口癖になっていたんですけど、それって逆で、ゲームしていたりドラマみたりして面白くないのは、普段が面白いからなのかなって。仕事でいろいろチャレンジしているし、しんどいことももちろんありますが、やりがいもありますし、基本的には面白い。週に1回は家族との時間をつくって、家族との年間目標もあるんですよ。いつどこ行こうとか次に何しようとか。充実してます。ということに最近気づきました。

壁に当たったときは、まずは受け入れ、考える

ーーそんな石黒先生でもやっぱり壁に当たることもあったのではないでしょうか。
ありますよ!どういうのを聞きたいですか(笑)?

ーー壁に当たったときに、どんな気持ちで乗り越えるのかなというのを聞きたいです。
基本的には“受け入れる”ということをするようになりました。昔はショックを受けたり腹を立てたりということをしていたんですけど、最近は受け入れてからどう乗り越えるかを考えるようにしています。先を行く先輩から壁にぶち当たった話をいろいろ聞いているので「あ!来たな!」と思うこともあります。壁に当たるのは、あまり嫌な感じはしないですね。組織がぐちゃっとしてしまったとしても「あ…やっぱり来たか」って(笑)。去年までは僕と2人の幹部で事務所の意思決定をやっていたんですが、その2人が一緒に辞めたんですよ。別室に呼ばれて「私たちは独立します。」って。まあそれもどう捉えるかなんですよ。この2人はもちろん優秀だし居てほしいなって思ってました。でもこの2人がいるから上手くいかなかったこともあったので。個の力が強い2人だったので、この強みを活かした仕事の仕方をしてしまうことが結構ありました。僕はそうではなくて、誰でもできる仕組みをつくらなきゃいけないという考えだったので。良い機会と思って元々いたメンバーを引き上げて、ちゃんとした仕組みづくりができたので、結果として今スムーズに仕事ができている環境ですね。そのときは一瞬ね、感情を受け取るとしんどくなっちゃうんで、起きたものは起きたものとして捉えて、そこは一旦受け入れてどう自分を変えていくのか。を考えるようにしています。さっき話した、先に経験されている人たちの話を聞いているので、初見のようなショックは受けなかったですね。「きたか」という感じですね。

ーーある程度の心構えが常にあると。
そうですね。あとはメンタルも強くなっていますよ、いろんなことを経験して。まあいろいろ起きますね。起きたら直すためのチャンスだと思って変えていっているし、そう思える人を社内で増やしていっている感じです。何か起きたら仕組みの欠陥があるから、この際直しましょうと。

大切なのは組織づくりと教育

税務業務・創業支援を行いつつ、さまざまなチャレンジを行ってこられた石黒健太先生。「開業から5年で売上1億円」というチャレンジを大きく上回る形で達成され、さらに自社や社員のチャレンジをお客さまに還元し新しい価値観の組織をつくるという新たなチャレンジもお持ちです。ドラッカーからの学びを「人の教育」「組織づくり」に役立て、苦手を得意でカバーしながら乗り越えられている石黒先生から学ぶことは多かったのではないでしょうか。

石黒先生、今回は貴重なお話をありがとうございました!

 

(取材・文/株式会社アカウティングプロ チャレンジタイムス担当)