経営力向上計画の税制措置(A類型)の申請~即時償却・税額控除はどっちが有利?~

皆さん、こんにちは。

第4回目は「経営力向上計画(A類型)」です。

中小企業・個人事業主向けの経営力向上を推進する「経営力向上計画」。経営力向上計画が認められると、税制措置や金融支援、法的支援といったさまざまな支援が受けられます。中でも税制措置の生産性向上設備(A類型)は、生産性の向上が認められている設備を導入することで税制優遇が受けられるため、積極的に利用をおススメできる制度といえるでしょう。今回は、税制措置A類型について節税の具体例とともに詳しく紹介します。

経営力向上計画とは?

まずは、経営力向上計画について紹介します。

経営力向上計画とは?

経営力向上計画とは、2016年に始まった中小企業や個人事業主向けの支援措置で、自社の経営力を向上させる計画が認められると、税制面や金融面で支援が受けられる制度です。経営力向上計画には、人材育成やコスト管理、設備投資などの分野があります。

「どんな事業計画が良いかわからない」という事業主の方は、公認会計士や商工会議所、中小企業診断士などの国が認めた経営革新等支援機関の支援や助言を受けながら事業計画を実現させることが可能です。

経営力向上計画の認定が受けられるのは、従業員数2,000人以下の会社、医療法人、社会福祉法人、個人事業主に限られていましたが、2023年3月31日までは従業員が2,000人を超えていても資本金が10億円以下の会社であれば認定対象になりました。

申請の提出先は事業分野によって異なり、総務省の日本標準産業分類で該当する事業分野の「中分類・細分類項目名」を確認し、中小企業庁ホームページ に掲載されている「事業分野と提出先」で提出先を確認できます。

計画申請から認定までは標準処理期間で30日かかりますが、経営力向上計画申請プラットフォームを用いて経済産業部局宛に申請した場合、標準処理期間が21日に短縮可能です。それでも時間は要するため、早めに行動することが大切でしょう。

支援措置は大きく分けて3種類

経営力向上計画において受けられる支援措置は大きく分けて3種類あります。それぞれどのような措置なのか見ていきましょう。

1.税制措置
設備投資金額の一部が優遇される法人税の特例や、事業継承の際の登録免許税および不動産取得税の特例などが受けられます。

2.金融支援
政策金融公庫や商工中金からの低金利融資や海外の金融機関から融資を受ける際に政策金融公庫が債務保証を行うスタンドバイ・クレジット、新事業活動の保証枠の拡大など、資金調達に関する支援が受けられます。

3.法的支援
業法上の許認可の継承の特例や事業を譲渡する際の免責的債務引受における特別措置があります。

次の章では、税制措置について詳しく見てみましょう。

経営力向上計画の税制支援措置とは?

税制支援のメインとなるのが、設備取得に係る税制措置です。その中身を詳しく見てみましょう。

設備取得に係る税制措置の中身

 経営力向上計画の税制措置のことを「中小企業経営強化税制」といいます。 中小企業者などが指定事業のために、一定の設備を新規取得した場合、設備投資でかかった費用を事業初年度に経費として一括計上できる即時償却(一括償却)、または取得価額の10%の税額控除が選択可能です。

ただし、資本金3000万円超1億円以下の法人は、10%ではなく7%の税額控除になります。中小企業経営強化税制が適応されるのは、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人や常時使用する従業員数が1,000人以下の個人、協同組合などです。

中小企業等経営強化税制の認定期間は、2017年4月1日から2023年12月31日までとなっていますが、期間は延長される可能性があります。

経営力向上設備等の種類A~Dとは?

税制措置の中小企業経営強化税制はA~Dの4種類に分類されています。

A類型:生産性向上設備(生産性が旧モデルと比較して平均1%以上向上する設備)
B類型:収益力強化設備(投資収益率が年平均5%を上回る設備)
C類型:デジタル化設備(可視化・遠隔操作・自動制御化のいずれかに当てはまる設備)
D類型:経営資源集約化に資する設備(修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定割合以上の設備)

出典:中小企業統計絵強化法に基づく支援措置活用の手引きより

A類型からD類型までありますが、設備投資をした企業に特におすすめなのがA類型です。
次の章で、A類型について詳しく見てみましょう。

中小企業経営強化税制A類型について

生産性向上設備の要件と対象設備

中小企業経営強化税制A類型に当てはまるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

【生産性向上設備の要件】
・一定期間内に発売されたモデル
・生産効率やエネルギー効率、精度などが旧モデルと比べて年平均で1%以上向上している

上記2つを証明するためには、 「工業会の証明書」 を取得しなければいけません。工業会の証明書は、設備メーカーおよび商社に発行依頼をすると、設備メーカー又は商社が工業会へ証明書発行の申請を行い、証明書がユーザーのもとへ届けられます。

証明書は申請から発行までで数日~2ヶ月かかるため、早めに発行依頼を行うことをおすすめします。また、生産性向上設備には対象となる設備や最低価格、発売開始時期が決められています。これをきちんと順守しないと税制措置の対象にはならないので注意しましょう。

設備の種類用途又は細目最低価額販売開始時期
機械装置全て160万円以上10年以内
工具測定工具及び検査工具30万円以上5年以内
器具備品全て30万円以上6年以内
建物附属設備全て60万円以上14年以内
ソフトウェア設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの70万円以上5年以内

中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引きより作成

設備は最新のものでなくてもかまいませんが、5~14年以内の販売開始期間が定められており、1台ごとの最低取得価額も設備の種類ごとに決められています。税制措置を受けるためには、上記の対象設備に当てはまるものを購入する必要があります。

中小企業経営強化税制A類型の手続き

ここで、中小企業経営強化税制A類型(生産性向上設備)の手続き方法について、順を追って見てみましょう。

1.工業会証明書を入手する
2.主務大臣(担当省庁)に経営力向上計画の申請をする
3.大臣より経営力向上計画の認定が下りる
4.設備を取得する
5.所轄の税務署に税務申告を行う

経営力向上計画の認定を受けたい事業主は、経営力向上計画に対象となる設備を記載し、工業会証明書の写しを添付して計画申請する必要があります。税務申告の際には、納税書類に工業会証明書の写し、計画申請書の写し、計画認定書の写しの添付が必要です。

中小企業経営強化税制A類型の具体的な節税例

最後に、中小企業経営強化税制A類型の具体的な節税例を見てみましょう。

【例1】資本金1,000万円・従業員50人の法人が生産性向上のために500万円の機械装置を購入した場合

この例の場合、資本金が1,000万円で従業員が50人なので、経営力向上計画の認定を受ける資格をクリアしており、設備の種類と条件にある「機械装置160万円以上」という要件も満たしています。

購入した機械装置が、工業会によって生産性が年平均1%以上あると証明しているなら、中小企業経営強化税制の生産性向上設備(A類型)が認められます。その際の節税方法は2種類から選択可能です。

節税1.即時償却の場合
1つ目の節税方法は、即時償却で、500万円すべてを事業初年度に一括経費計上できます。経費として設備投資金を計上すると、利益が圧縮されるため法人税が軽減できます。通常、設備投資の金額は、減価償却で耐用年数に合わせて経費計上しますが、即時償却することで早めに現金が回収できるのです。

回収した現金は、再投資のための資金や借入金の返済など、事業経営に必要な箇所で利用できるため、積極的に設備投資をしたい会社にとってメリットがあります。最終的な納税額は、減価償却の場合と同じということも併せて覚えておきましょう。

節税2.税額控除の場合
2つ目の節税方法は税額控除です。この企業の場合、資本金が1,000万円のため、10%の税額控除を受けることができます。計算式は以下の通りです。

税額控除できる金額
 500万円×10%=50万円

つまり、法人税から50万円を差し引くことができます。

しかし、税額控除は支払うべき税金から直接控除するため、設備取得を行った年に利益がでていない場合、控除する税金がないため節税効果が少なくなります。

【例2】資本金5,000万円・従業員900人の法人が生産性向上のために機械装置に700万円、ソフトウェアに300万円の設備投資をした場合

この例の場合も、資本金が5,000万円で従業員が900人なので、経営力向上計画の認定を受ける資格をクリアしており、「機械装置160万円以上」、「ソフトウェア70万円以上」という設備の価格要件もそれぞれ満たしています。

節税1.即時償却の場合
即時償却の場合、機械装置700万円とソフトウェア300万円を合計した1,000万円を一括経費計上することが可能です。

節税2.税額控除の場合
「資本金3,000万円超1億円以下の法人」の税額控除は7%です。設備投資金額は合計1,000万円なので計算すると、以下の通りになります。

税額控除できる金額
1,000万円×7%=70万円

法人税から70万円を差し引くことが可能です。

即時償却と税額控除どっちを選ぶべき?

即時償却と税額控除どちらを選ぶべきなのかは、税額控除の率や取得設備の金額、さらに企業の経営状況や考え方によっても異なります。一般的には、税額控除のほうが有利になる場合が多いですが、すべてのケースで当てはまるわけではありません。

即時償却と税額控除のどちらが有利に働くかは、細かくシミュレーションする必要があるので、迷ったときはプロに相談することが大切です。

即時償却と税額控除どっちを選ぶべき?

自社の経営力を向上させる計画が認められると、税制措置や金融支援が受けられる経営力向上計画。中小企業や個人事業主にとって、さまざまな支援を受けながら税金の優遇や低金利融資が受けられるとあって、積極的に活用したい制度のひとつです。特に、税制措置の中の生産性向上設備(A類型)は、生産性アップが認められた設備を導入することで受けられるため、利用しやすいでしょう。税制措置は即時償却と税額控除が選択できますが、どちらが有利なのかは経営状況や考え方で異なるため、迷ったときはプロに相談することをおすすめします。