【集中連載】事業再構築補助金 要件とNG編1

 事業再構築補助金の短期集中解説の3回目です。
 今回は事業再構築補助金の申請要件を一つ一つ挙げていき、どのような条件を満たせば申請できるかを明らかにします。
 種別では 「通常枠」「卒業枠」「グローバルV字回復枠」「緊急事態宣言特別枠」 、申請方針では 「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」 とバリエーションが複数あるため、『これさえ満たせばOK』という物は提示しにくいですが、目安としていただければと思います。

申請時に守る必要がある要件について

まず最初に、通常枠にも記載されている基礎要件を列挙します。

事業再構築補助金の主な要件
1.【事業再構築要件】事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること
2.【売上高減少要件】2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月(連続する必要なし)の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して 10%※1以上減少していること
3.【認定支援機関要件】事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が 3,000 万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ)と策定していること
4.【付加価値額要件】補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%※2以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%※2以上増加する見込みの事業計画を策定すること
※1 グローバルV字回復枠は15%。
※2 グローバルV字回復枠は5.0%。

 この中で一番大事なのは、やはり1.【事業再構築要件】となりますが、長くなるため、先に他を紹介したいと思います。

2. 【売上高減少要件】は過去回でも触れている要件ですが、これらの証明には法人・個人でそれぞれ下記の資料を用意します。

法人の場合個人事業主の場合
(1)申請に用いる任意の3か月の比較対象となるコロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の売上が分かる年度の確定申告書別表一の控え(1枚)
(2)(1)の確定申告書と同年度の法人事業概況説明書の控え(両面)
(3)受信通知(1枚)(e-Taxで申告している場合のみ)
(4)申請に用いる任意の3か月(2020年又は2021年)の売上がわかる確定申告書別表一の控え(1枚)
(5)(4)の確定申告書と同年度の法人事業概況説明書の控え(両面)
(1)申請に用いる任意の3か月の比較対象となるコロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の売上が分かる年度の確定申告書第一表の控え(1枚)
(2)(1)の確定申告書と同年度の月別売上の記入のある所得税青色申告決算書の控えがある方は、その控え(両面) ※白色申告の方は対象月の月間売上がわかる売上台帳、帳面その他の確定申告の基礎となる書類を提出してください。
(3)受信通知(1枚)(e-Taxで申告している場合のみ)
(4)申請に用いる任意の3か月(2020年又は2021年)の売上がわかる確定申告書第一表の控え(1枚)
(5)(4)の確定申告書と同年度の月別売上の記入のある所得税青色申告決算書の控えがある方は、その控え(両面) ※白色申告の方は対象月の月間売上がわかる売上台帳、帳面その他の確定申告の基礎となる書類を提出してください。

 簡潔に書くと売上減少した年とその前年、二期分の確定申告書を用意する形ですが、減少した年の確定申告がまだの場合は、 該当月の売上がわかる「売上台帳等」および「試算表」「帳面」など確定申告の基礎となる書類を添付する ことで対応可能です。


 3.【認定支援機関要件】については、国が承認した『認定経営革新等支援機関』と協力して計画書を作成することが必要となります。計画書作成の支援を主業務としている『認定支援機関』もありますので、そういった『認定支援機関』に協力を依頼すると要件を満たしつつ、効率よく計画書を作成することも可能です。ちなみに……弊社も補助金支援を主業務としている『認定支援機関』ですので、よろしければお気軽にご相談ください。


 4.【付加価値額要件】は 『付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)』 を申請時点から毎年3%上昇させる計画を策定する必要がありますが、こちらはあくまで見込みの為、極論達成できなくとも問題ありません(現時点での事業再構築補助金の場合です。同種の要件がある他の補助金ではその限りでは無いのでご注意ください)。唯一、グローバルV字回復枠のみ、特筆する予期せぬ事態が起きていない限り、事業計画期間終了時(3~5年後)に達成できていなかった場合、通常枠の補助上限額との差額分を返還する必要があります(1億円-8,000万円なので最大2,000万円の返還)。

 

事業再構築要件とよくあるNG

 さて、改めて1.【事業再構築要件】についてです。5つの方針要件を記載する前に、それぞれ分類のカギとなる「業種」「事業」が何を指すかを解説します。これらは補助金の要項内では『日本標準産業分類』を参照して判断することとなっています。

日本標準産業分類とは
 「モノやサービスを生産又は提供するところ」を経済活動別に分類するためのものとして、総務省が本来は統計結果を表示するために定めている分類
 大分類、中分類、小分類、細分類の4つのレベルに分かれており、事業再構築指針では、この分類を基に、新分野展開、事業転換、業種転換の定義や該当要件を定めている

 「業種」は『日本標準産業分類』の大分類、「事業」は細分類を参照に判断します。「業種を変える・変えない」「事業を変える・変えない」の判断は『日本標準産業分類』に当てはめた際にどうか、で確認する形となります。
 それを踏まえて下記の事業再構築要件一覧をお読みください。

新分野展開事業転換業種転換業態転換事業再編
[定義] 中小企業等が主たる業種又は主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等することにより、新たな市場に進出すること
[必要となる要件]製品等の新規性要件、市場の新規性要件、売上高10%要件
[定義] 中小企業等が新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること
[必要となる要件]製品等の新規性要件、市場の新規性要件、売上高構成比要件
[定義] 中小企業等が新たな製品を製造することにより、主たる業種を変更すること
[必要となる要件]製品等の新規性要件、市場の新規性要件、売上高構成比要件
[定義] 製品等の製造方法等を相当程度変更すること
[必要となる要件] 製造方法等の新規性要件、製品の新規性要件、売上高10%要件
[定義] 会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うこと
[必要となる要件] 組織再編要件、その他の事業再構築要件

 大まかな要件はどれも変わらず、 既存の業種・事業に対し、規模や方向性など、どの位のレベルで異なる新事業を始めるか によって申請の要件が異なってきます。その中で原則的に必要となってくるのが『製品等の新規性要件』『市場の新規性要件』であり、中でも『市場の新規性要件』が厄介な要件(意識しないとNGになりやすい要件)になっています。

  『市場の新規性要件』は「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」 と定義されているのですが、その代替性の程度が意外とハードル高めに設定されています。以下は手引きに記載されている満たさない例です。

>既存の製品等とは別の製品等だが、対象とする市場が同一である場合(新製品等を販売した際に、既存製品等の需要がそのまま代替され、その売上が減少する場合)は市場の新規性要件を満たしません。
 この案件では、具体的に「アイスクリーム屋が新たにかき氷を販売する場合、従来の顧客がアイスクリームの代わりにかき氷を購入することを想定する事業計画ではNG」と例が記載されています。つまり、既存の顧客を満足させるだけの事業計画ではNGとなるため、 新規顧客を(なるべく多く)獲得できる計画を策定する必要がある のです(当然、正当性も必要)。新たな業種に挑む際はともかく、新分野展開・事業転換で新しい製品を製造する際には、充分にターゲット設定を検討する必要があります。
ワンポイント:新事業では新規顧客を獲得すること

 

 もう一点厄介なのが、 業態転換における『製造方法等の新規性要件』 です。これは実際によくある具体例なのですが、業態転換の場合、コロナ禍での接触機会軽減という目的もあって、主に有人接客からオンラインサービスへの移行を考える事業者様が多くいらっしゃいます。その中で、「過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと」という条件に引っかかることがあります。例えば、小売店がECサイトを構築したい場合、「過去に少しでもネット販売を行っていた」or「ECサイトの原型はできているが殆ど活用していない」といった 『現在は充分な形でECサイトを運用していない』状態であっても対象外 となってしまいます。オンラインサービスも同様、一度試したことがある場合は、対象外となります。オンラインサービスへの移行は事業者・消費者ともに需要がある一方、「過去の実績」により対象外になってしまう恐れがあるため、気を付けましょう。
ワンポイント:オンラインサービスへの移行は完全新規でないとNG

 
 他にも色々な要件がありますので、次回ももう少し触れていきますが、詳細は『事業再構築指針の手引き』をご確認いただくのが一番かと思います。具体例を交えての紹介もありますので、自身の計画に当てはまる分野だけでもお読みいただくと、参考になるはずです。