明けましておめでとうございます!~営業利益率50%企業から学ぶ、会計の強化書~

明けましておめでとうございます!(と言っても、1月も半ばですが、、笑)
株式会社アカウティングプロ・若杉公認会計士事務所、代表の若杉です。
お陰様で独立して約7年。
延べ300社以上の新規事業計画の立案・決算書分析をさせて頂きました。
300社の中には当然ながら色んな会社様がいらっしゃるわけで、
「上場IPOで個人資産数十億円」「税引後純利益1億円」といった最高に眩しい場面や
「自己破産と離婚を迫られる」といった修羅場まで、、、
決してSNSには出てこない様々なリアルの傍に立って来ました。
新年のブログですので、
新年の抱負を!!と思ったのですが、
まだ社内にも発表していないので、ブログで勝手に発表はできません。。。(笑)
そこで、今回のブログでは新年のご挨拶も兼ねまして、
当時全国最年少で会計士合格した立場からの「会計の理論」と、
上記のような「中小企業のリアル」を組み合わせて、
高利益率経営(具体的には営業利益率50%)のポイントを「会計」という視点でマニュアル化してみようと思います。
年明け早々、早くも先行き不安が囁かれる2019年ですが、
少しでも「明るい気持ち」と「戦う勇気」を持って頂ければ幸いです。
■1:営業利益率50%の黄金比
どのようにすれば営業利益率50%を達成できるのか?
数々の事例を分析した結果、以下のような仮説を持っています。
営業利益率50%=売上総利益率80%×売上総利益回転率※0.625倍
※売上総利益回転率というのは、若杉が勝手に作った指標です。もう少しいい名前がないか考えています。
式にすると以下の通りです。
営業利益 売上総利益 営業利益
ーーーーー = ーーーーーーー × ーーーーーーー
売上 売上 売上総利益
例えば、高利益率で有名なKeyenceの財務分析は以下の通りです。
【平成29年3月期】
営業利益率53.6%=売上総利益率80.8%×売上総利益回転率0.663
【平成30年3月期】
営業利益率55.59%=売上総利益率82.1%×売上総利益回転率0.6769
※決算データは有価証券報告書第49期 (平成29年3月21日-平成30年3月20日)より
https://www.keyence.co.jp/company/outline/securitiesreport.jsp
もちろん、一概には言えませんが、
売上総利益率90%などの場合には、原価の計上漏れ(販管費への混入)を疑うべきです。
特に税務上は、原価なのか販管費なのかはあまり細かく見ないことが多いようなので、
一度、自社の経理ルールをみなおして、原価項目を適切に設定することが重要です。
※例えば、弊社では「印刷費」は販管費ではなく原価項目に設定しています。
また、セミナーをやることが多いのでその際の「貸会議室の費用」なども、販管費ではなく原価項目に設定しています。
つまり、営業利益率50%を目指す場合には、
①売上総益率80%
②売上総利益回転率0.625倍(つまり、販管費は売上総利益の37.5%までに抑える)
という目標が導かれます。
以下では、①売上総益率80%について、もう少し記述させて頂きます。
※②売上総利益回転率については、また機会がありましたら。。。
■2:売上総利益率80%を目指すために
では、売上総利益率80%を目指すためにはどうすればいいのでしょうか?
売上総利益率=原価率×原価付加価値倍率※です。
※原価付加価値倍率というのは、若杉が勝手に作った指標です。
売上総利益 原価 売上総利益
ーーーーー = ーーーーーーー × ーーーーーーー
売上 売上 原価
例)売上総利益率80%=原価率20%×原価付加価値倍率4倍
売上総利益(80) 原価(20) 売上総利益(80)
ーーーーーーー = ーーーーーーー × ーーーーーーー
売上(100) 売上(100) 原価(20)
数式を見ると当たり前なんですが、意味合いは全く異なりまして、
方法1)原価率を下げる
方法2)付加価値倍率を上げる
といった2つの方法が導かれます。
さて、ここから具体的なテクニックを説明します。
方法1)原価率を下げる
原価率を下げるといった場合に、材料を安いものにしようとか、そういったせこいことは考えない方がいいです。
利益率を圧倒的に高める前提での原価率を下げる方法は、
「範囲の経済」の追及によるシナジー効果です。
具体的に言うと、今と同じ原価の中で、顧客数を2倍、3倍、5倍と増やすにはどうすればいいか?を
考えることがポイントです。
※範囲の経済
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88
お惣菜屋さんが、野菜を仕入れて総菜を作っていたとして、その野菜の切れ端を捨てていたとします。
例えば、この切れ端を使って健康ドリンクを販売したらどうでしょう?
ドリンクの販売分がそのまま利益増加になります。
今まで対面で1つ1つセールスしていたものが・・・
オンラインで全て申込まで完結できるとしたらどうでしょう?
今まで在庫を抱えて地域の得意先にしか販売していなかったものが・・・
オンラインで全国販売できたらどうでしょうか?
今まで1社1社サービス提供していたものが・・・
コンテンツとして100社に販売できたらどうでしょうか?
このように「今と同じ原価」で
顧客・販売数量を2倍、3倍、5倍と増やす方法を考えることで、
結果的に原価率が下がることを考えると飛躍的に利益率が高まります。
なお、ここでポイントとなるのは
①限界費用0のネットの活用と②スペシャリティの排除です。
インターネットの発達、そして、SNSのようなマッチング文化の発達によって、
WEB上でのサービス完結・マッチング完結が当たり前になってきました。
WEBを活用することで、サービスを追加販売することのコスト(限界費用)は限りなく0になりました。
新規の見込獲得はもちろん、申込までをいかにWEB完結できるようにするか?
それによって、原価を増やさずに売上を増やして、原価率を下げることができるか?が視点となります。
(※ちょっとこれには、ポイントと順番があるのですが、今回は省きます)。
次に、②スペシャリティの排除です。
これについては、マーケティング面の話と組織内での運営面の話があるのですが、
今回はマーケティング面の話を書きます。
※組織内の運営は、私自身もまだ悪戦苦闘中ですので(苦笑)
特定の誰かしか出来ないサービスなどは、絶対的な提供数に限りが出ます。
スケールを考える上では、いかにスペシャリティを排除するか。
つまり、提案やカスタマイズの余地を限りなく0にして、
パッケージとしてサービスを提供できるか。がポイントとなります。
(※これも、いくつかポイントと順番があるのですが、今回は省きます)。
例えばマッサージ店などでは、
究極、1人1人ヒアリングをして最適な施術を行うのが理想でしょうが、
ほとんどの店舗では30分コース、45分コース、60分コースなど、
サービスが「パッケージ」として決められており、どんな人でもこのパッケージを販売するようにされています。
1つ1つオーダーメイドで提案するよりも、
ある程度の既製品としてサービスを決めておいたほうが、絶対的な販売数は増えていきます。
方法2)付加価値倍率を上げる
次に、付加価値倍率を上げるという方法です。
ブランド物などは、まさにこの視点でしょう。
10円で仕入ものを15円で売ってはいけません。
10円で仕入れたものにいかに付加価値をつけて50円で売らないといけません。
ただし、この時に「10円で仕入れた」から考えてはいけません。
ここがポイントなのですが、顧客にとって50円の価値とは何か?ここから考えることが極めて重要なのです。
10円から考えると、良くても2倍の20円。
ではなくて、顧客の50円の価値はどこにあるか。ここを徹底的に考える必要があります。
■3:ただし一番大事なのは、、
以上、会計的に営業利益率50%を考えてみましたが、
後は、「必死に考えて」「現場での仮説検証を繰り返す」しかありません。
で、実はこの
「考える余裕の有無」
「テストマーケティングで現場(主に既存客)とコミュニケーションを取れる余裕」
という点が大きく業績を左右するポイントでもあります。
そこで、どうやったら余裕を作れるか?を会計的な視点で考えてみましょう。
1)月商3カ月分の預金(または流動資産)を確保
2)月次試算表は毎月5日以内に発生主義で出す
3)毎月、決算着地の売上総利益率・営業利益・収支を予想する
4)毎月、「試算表の売上÷請求書発行枚数」で顧客単価を測定する。
1)
まず前提として、経営者は人間です。
気持ちの問題として、精神的な余裕が無ければ、ゆっくり考えることもできません。
また、業績の悪い会社はトライの数が少ない(社長がお客様と会っていない)ことが多いのですが、
やはり目先の利益に追われていては、トライアンドエラーのエラーを重ねる余裕がありません。
結局、答えは現場にしかないのです。
現場のお客様のニーズや悩み、お困りごと。
これを直接拾って、改善を繰り返さない限り机の上だけでは何にも業績は良くなりません。
そのための余裕を確保するためにも、借入などを通じた資金確保は重要です。
2・3)
さらに、実績をすぐに把握して、すぐに改善を行う。
よく言うPDCAサイクルを早くすることが重要です。
何社も何社も何社も何社も何社も何社もみてきて本当に共通しているのは、
月次試算表の作成に10営業日以上かかる会社は業績が悪い場合が多いです。
理想は、発生主義で5営業日以内。即時の実績把握と即時の改善が極めて重要です。
このようにPDCAを重ねながら、毎月決算の着地を予想する。
現場の定性情報を数字で見れている方はとても強いですし、改善に向けての行動も早いです。
4)
また、顧客単価の増減にアンテナを貼ることがとても重要です。
新規顧客獲得が一番コストがかかるので、
既存顧客への継続的な価値提供(とそれによる顧客単価増加)ができなければ
半永久的に新規顧客を追い続けることになってしまいます。
しかしながら、厳密な顧客単価は測定が難しい場合があるので、
個人的には請求書発行枚数を毎月の顧客数と仮定して顧客単価を測定することを推奨しています。
■4:専門家として出来ること
最後に、専門家としてはどのように経営者の方を支援できるのか?
この点についても、主に会計という観点から、書いてみたいと思います。
1)公的制度を活用した資金調達・キャッシュフロー計算書の作成
2)経理ルールの指導・勘定科目の統一
3)顧客リストで顧客情報を管理する
4)金融機関との対話を支援する
1)公的制度を活用した資金調達・キャッシュフロー計算書の作成
こちらについては、例えば、
「経営力向上計画の認定を通じた保証協会の別枠融資」「経営力強化資金」などの
公的制度を活用した融資や、
「ものづくり補助金・小規模事業者補助金・IT補助金」といった補助金など、
公的な制度を活用しながらの資金繰りの円滑化・資金調達の支援が挙げられます。
公的制度はどうしても煩雑になりがちなので、一般の方にはわかりにくくなっています。
専門家の最低限の知識としてこういった「制度がある」というのは知っておくべきでしょう。
また、貸借対照表・損益計算書のみならず、
キャッシュフロー計算書を作ることで資金繰りの資料を作ることも価値があります。
2)経理ルールの指導・勘定科目の統一
財務分析を行う上では、そもそも入力されている試算表を正として分析をします。
※昔は全て試算表を組み替えていましたが、大変なのでやめました。
しかしながら、当然、経理の方が入力しているものですので、処理に一貫性が無かったり誤りがあったりします。
その中でも、特に専門家として指導すべきポイントは以下の2点です。
・勘定科目のルール・マニュアルの作成
・月次決算早期化のコンサルタント
特に決算書の販管費の項目について、どの経費がどの科目に入っているのかわからない、
処理が曖昧、というものが散見されます。
また、上述したように、売上原価項目の設定が間違っているものも多くあります。
経営者の方と打ち合わせをしながら、
「この取引はこの勘定科目」というように経理のルール作成(経理規定)をしてあげると経理の方の負担も減りますし、
経営者の方も試算表に興味がわくようになるし、専門家としてもより正しい分析ができます。
また、月次決算を5日以内に発生主義で出せるようなコンサルティングも非常に価値があると思います。
※また、その過程でクラウド会計導入の支援なども非常に付加価値が高いでしょう。
3)顧客リストで顧客情報を管理する
専門家としては、日々の業務を行うだけではなく、お客様の状況を定期的に俯瞰することが重要です。
例えば、顧客リストの中には、決算情報などを入力することで、
定期的にお客様の状況がどうなっているのか?を見て、必要に応じて提案を行うことが重要です。
4)金融機関との対話を支援する
また、上記のようなことを金融機関に開示するお手伝いも非常に重要です。
2018年4月の信用保険法の改正、金融検査マニュアルの廃止などによって
金融機関の融資姿勢が変わってきています。
また、経営者保証ガイドラインに基づき、経営者保証無しでの融資の推進もされてきています。
ただし、こういったことは、
日ごろから金融機関の方と適切なコミュニケーションができていないと対応してくれません。
他方で、金融機関とのコミュニケーションと言われても何をどう話せばいいのわからない方がほとんどです。
専門家として、定期的に金融機関の方に提出するコミュニケーション資料を作成してあげることが、
今後とても有益だと思います。
というわけで、
高利益率経営(具体的には営業利益率50%)のポイントを「会計」という視点で書かせて頂きました。
2019年の計画を考える上で少しでもお役に立てたなら嬉しいです。
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